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大阪地方裁判所 平成7年(ワ)10180号 判決 1996年6月27日

原告

田中伸也

被告

池田友蔵

ほか一名

主文

一  原告の請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第一原告の請求

被告らは、原告に対し、連帯して金一七二一万八四二四円及びこれに対する平成五年七月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二事案の概要

本件は、普通乗用自動車と自転車が衝突し、自転車の運転者が負傷した事故に関し、負傷した原告が、普通乗用自動車の運転者である被告池田友蔵(以下「被告池田」という。)に対し、民法七〇九条に基づき、同車の保有者である被告株式会社金下工務店(以下「被告金下」という。)に対し、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条に基づき、損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実

1  次の交通事故(以下「本件事故」という。)が発生した。

(一) 日時 平成五年七月三一日午後六時五〇分ころ

(二) 場所 京都府宮津市字日置四〇一三番地先路上(以下「本件現場」という。)

(三) 加害車両 被告池田運転の普通乗用自動車(姫路五八て五四四〇、以下「被告車」という。)

(四) 被害車両 原告運転の足踏み式自転車(以下「原告車」という。)

(五) 熊様 原告車が国道一七八号線(以下「国道」という。)に通じる道路(以下「交差道路」という。)を南進し、突当たりの本件現場となるT字型交差点(以下「本件交差点」という。)を右折しようとして国道を東進してきた被告車と衝突したもの

2  被告らの責任

被告池田は、本件事故につき、制限速度違反と前方不注視の過失があり、被告金下は、被告車を保有し、自己のために被告車を運行の用に供していたものであるから、被告池田は民法七〇九条に基づき、被告金下は自賠法三条に基づき、原告に対して損害賠償責任を負う。

3  原告の受傷

原告は、本件事故により頭部打撲、硬膜外出血、左肩関節脱臼、右大腿骨骨幹部骨折、左鎖骨遠位端骨折、左肘・右肘挫創、左手背挫創、顔面挫傷、左母趾挫創、腹部打撲の傷害を受け、右治療費(社会保険分を除く)に二一二万六六九七円を要した。

4  損害のてん補

原告は、被告らから、本件事故の損害のてん補として、治療費二一二万六六九七円の支払いを受けた。

二  争点

1  過失相殺

(被告らの主張)

本件交差点では国道が優先道路であるから、原告は同交差点に進入するに当たり、一時停止した上で左右を十分確認する必要があつたにもかかわらず、これを怠つたのであるから、原告には重大な過失がある。

(原告の主張)

国道が優先道路であるか疑問であるし、仮にそうであつたとしても、被告池田は、本件交差点のかなり手前で交差道路を同交差点に向かつて走行してくる原告車を認めながら、事故直前まで原告車の動向を全く注意せず、制限速度を約一〇キメメートル超える時速約六〇キロメートルで走行し、事故直前、原告車の方で急ハンドルをきつたため原告車が自車走行車線にわずか一・三メートル進入した地点で自車の右前部を原告車の前部に衝突させたものであり、原告車で自転車であること等をも勘案すれば、被告池田の方が過失が大きく、原告の過失は二割とすべきである。

2  損害(特に後遺障害の程度)

第三争点に対する判断

一  争点1(過失相殺)について

1  前記争いのない事実及び証拠(検甲一の一ないし一二、乙一、原告、被告池田)によれば、以下の事実が認められる。

(一) 本件現場は、周囲が非市街地の国道と交差道路が交わる信号機のないT字型交差点(本件交差点)であり、その概要は別紙図面のとおりである。国道は、最高速度が時速五〇キロメートルに規制された幅五・七メートル(東行車線二・九メートル)のアスフアルトで舗装された平坦な道路であり、本件事故当時、路面は乾燥していた。交差道路は、幅六・八メートルであり、国道に向かつてやや下つている。明るさは、本件事故時、車両の動向が十分見える程度であり、被告車・原告車双方からの見通しは互いに良い。そして、本件交差点では国道の中央線のみが設けられているから、交差道路は優先道路ではなく、国道が優先道路となる(道路交通法三六条二項参照)。

(二) 被告池田は、被告車を運転して国道東行車線を時速約六〇キロメートルで走行中、図面<1>(本件交差点手前約四〇メートル)で交差道路を本件交差点に向かつて進行する原告車を図面<ア>(本件交差点手前約一〇メートル)に認め、前方の対向車線に視線を転じ、図面<2>で同交差点に進入しようとする原告車を図面<イ>に発見し、危険を感じてとつさにハンドルを左にきり、ブレーキをかけたが、間に合わず図面<3>で被告車の右前部が図面<×>の原告車の前部に衝突した。

(三) 原告は、原告車を運転して交差道路を本件交差点に向かつて走行中、図面<ア>の辺りで右方を確認したところ、国道を東進中の被告車を図面<1>に認めたが、同交差点で国道を横断できると思いそのまま直進しながら、左方を確認し、再度右方を確認したら、被告車が直前に迫り危険を感じたので図面<イ>であわててブレーキをかけたが間に合わず、前記のとおり衝突した。

2  以上の事実によれば、被告池田には、図面<1>で図面<ア>に進行する原告車を認めたにもかかわらず、図面<2>に至るまで原告車の動向を全く確認せず、制限速度を約一〇キロメートル超える速度で進行した過失があるが(衝突直前にとつさにハンドルを左にきつた点は、被告池田が衝突を回避しようとしてとつさに原告車の進行する方向とは逆方向にハンドルをきつたものと認められるから、これをもつて被告池田の過失とみることはできない。)、他方、原告にも、本件交差点の通行に際し、国道の方が優先道路であるから、同交差点で被告車と交差するようであれば、進路を譲るなどして被告車の通行を妨害しないように走行すべき注意義務があるのに、図面<ア>で図面<1>に走行する被告車を認めながら、右注意義務を怠り、本件交差点進入寸前まで被告車の動向を全く確認せず進行した過失がある。そして、前記事故熊様に照らし、双方の過失を考慮すれば、原告車が自転車であることを勘案しても、原告の過失割合は七割とするのが相当である。

二  争点2(損害)について(円未満切捨て)

1  証拠(甲二ないし一六の各一、二、一七、乙二、三の一、二、四、原告)によれば、原告の治療経過、後遺障害は以下のとおりであることが認められる。

原告は、本件事故により前記傷害を受け、京都府立与謝の海病院に平成五年七月三一日から同年八月二八日まで二九日間、高井病院に同年一〇月五日から同月九日、同年一二月二〇日から同月二五日、平成六年八月二二日から二八日まで一九日間それぞれ入院し、同病院に同年八月三〇日から平成七年三月二三日まで(実日数七五日)通院して治療を受けた後(平成五年八月一九日に星ケ丘厚生年金病院に通院)、右同日に症状固定となり、後遺障害として、自覚症状「左肩の痛み、右顔面のしびれ感、右股関節・膝関節の疼痛及び可動域制限」、他覚症状「右顔面にしびれ、右眼及び口唇にチエツク様症状」、醜状障害「上肢(肩付近)と右股関節に約一〇センチメートルの肥厚性瘢痕」等と診断され、自賠法施行令二条別表の後遺障害等級表一四級一〇号の認定を受けたが、現在では日常生活をするうえでほとんど支障がない。

2  入院雑費(主張額六万二四〇〇円) 六万二四〇〇円

原告は、前記のとおり本件事故により四八日間の入院を要したのであり、一日当たりの右雑費は一三〇〇円とするのが相当であるから、入院雑費は六万二四〇〇円となる。

3  入通院慰謝料(主張額二〇〇万円) 一八〇万円

前記した入通院期間、原告の受傷内容等を勘案すれば、一八〇万円とするのが相当である。

4  付添看護費(主張額二八万八〇〇〇円) 二一万六〇〇〇円

前記した原告の受傷内容、程度、年齢等に照らせば、前記四八日間の入院期間中父母の付添看護が必要であつたと認められ、一日当たりの右費用は四五〇〇円とするのが相当であるから、付添看護費は二一万六〇〇〇円となる。

5  後遺障害逸失利益(主張額一四四五万八〇七一円) 四一万三七四六円

原告は一一級相当の後遺障害が残存しているとして労働能力喪失率二〇パーセントを主張するが、前記した後遺障害の内容、症状等に照らせば、後遺障害等級は一四級一〇号、労働能力喪失率は五パーセント、喪失継続期間は症状固定後五年間(平成一二年まで)を認めるのが相当である。そうすると、原告は、本件事故当時、大阪府立工業高等専門学校二年生(症状固定時は一九歳)であり(原告)、前記後遺障害により卒業・就職予定の平成九年四月から平成一二年までの三年間、平成五年度賃金センサス産業計・企業規模計・男子労働者の高専・短大卒二〇ないし二四歳の平均年収三〇三万円の五パーセント喪失することになるから、ホフマン方式により中間利息を控除して後遺障害逸失利益を算定すると、以下のとおり四一万三七四六円となる。

3,030,000×0.05×2.731=413,746

6  後遺障害慰謝料(主張額三九〇万円) 八〇万円

前記後遺障害の内容、症状等を勘案すれば、八〇万円が相当である。

7  交通費(主張額三二万九八四〇円) 一九万九〇二〇円

原告は、本件事故により前記通院治療のための交通費八万四〇九〇円及び前記専門学校通学のための交通費一一万四九三〇円を要したが(甲一八の一ないし三)、父母の付添看護のための交通費は前記付添看護費に含まれるので別損害としてはこれを認めない。

8  前記争いのない治療費二一二万六六九七円を含む損害合計は五六一万七八六三円となるが、前記した七割の過失相殺をし、既払金二一二万六六九七円を控除すると、残金はなく、すでに損害は既払金でてん補されたこととなる。

三  以上によれば、原告の請求はいずれも理由がないから、主文のとおり判決する。

(裁判官 佐々木信俊)

別紙図面

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